災害時の看護ボランティア活動の知恵袋

災害時の看護ボランティア活動の知恵袋

~発災後1ヶ月程度まで~
■1.被災地へのアプローチ
1)準備
・自己完結型の準備
服装:身軽、安全、着脱しやすい、腕章;看護ボランティアと分かるもの
物品:生活必需品(寝袋・食料・水 等)
活動必需品(地図、コミュニケーションツール等連絡手段、医療器具(血圧計、聴診器等)、記録用紙等)

・災害の種類・時期に応じた服装・必要物品の準備
ex.水害の場合:軍手・ゴム手袋・ゴーグル・マスク・目薬・うがい薬・長靴など
夏場の活動:熱中症対策(帽子、梅干し、塩 等)

・ボランティア保険の確認
・活動期間の考慮(相手との関係性や疲労面を考え1週間程度での交代が望ましい)
・家族、職場など自分の周りの調整


2)情報収集
●情報収集内容
・被災地域の状況
・支援体制(下記2 被災地状況のアセスメントを参照に事前に得られる情報)
・アクセス先(自分が現地のどこへ行くか)
⇒対策本部・ボランティアセンターの設置の有無、位置などを確認する

●情報収集先
・個人的ネットワーク(知人・友人)
・保健所・役場・保健センターなどの行政
・全体的な状況把握には対策本部を活用

●情報収集手段
・j電話、インターネット、ラジオ、新聞 等

■2.被災地状況のアセスメント
1)被災地域の状況
・被災地の地域特性(都市・農村、交通、社会資源など)
・被災地住民の特徴(年齢構成、住民同士のネットワーク、住民組織、住民の意識など)
・災害の種類・規模
・被害状況(人的、物的被害、ライフライン等)
・住環境(プライバシーの確保等)
・衛生環境(清掃、換気、飲料水の確保、トイレ等)
・医療ニーズ(応急処置、慢性疾患、感染症、メンタル面への対応等)
・保健福祉サービスの稼働状況(デイサービスセンター、ホームヘルパーステーション、作業所等)
・配給内容・配給状況(水・食料などの生活必要品の充足状況)
・被災地を管轄する保健活動の拠点・所在地


2)被災対象者の状況
・家族構成(同居家族の有無、身寄りの有無等)
・生活状況(食事、睡眠、仕事、情緒的な支え(生きがい、趣味、ペット等)等)
・被災住民の生活の場(自宅、避難所、被災前との違い)
・健康状態(医療の必要性、慢性疾患等のコントロール等)
・近所づきあい
・社会資源の利用状況(介護保険・福祉サービス等:デイサービス、機能訓練、療育訓練等)
・気持ち、思い(将来の生活への不安、恐怖心、失ったものは何か(家、家族・・・))
・災害時支援優先度の高い人の把握
 →対象特性的側面…乳幼児・妊婦、高齢者、障害者、単身者、要介護者、外国人
 →疾病問題…難病、寝たきり、精神疾患、慢性疾患、結核、認知症、在宅人工呼吸療法患者・在宅酸素療法患者など医療依存度の高い人


■3.被災者への支援
1)避難所での支援
●生活環境への援助
・冷暖房などの温度調整や換気、照明、騒音の配慮
・トイレをはじめ居室の清掃、ゴミの始末
・ペットなど動物の扱い
・分煙への配慮(喫煙コーナーの設置、配置)

●食生活への援助
・年齢・体調・疾患により食事への配慮が必要な人に対する食事メニューの調整
ex.高齢者、乳幼児、体調の悪い人、消化能力の低下している人、高血圧や糖尿病・透析患者など慢性疾患をもつ人
・充分な水分補給への援助
・食事介助

●保清・排泄への援助
・介助を要する人(新生児、高齢者など)に対する入浴介助
・入浴できない人(怪我、寝たきりなど)に対する清拭・洗髪など
・排泄介助(おむつ交換も含む)

●睡眠・プライバシーの確保に対する援助
・スペースの確保
・仕切りをつくるための物資の補給
・着替えの場や静養室、授乳室の確保

●活動に対する援助
・生活リズムを整えるきっかけづくり(起床・就寝、一斉清掃)
・運動不足解消のための朝のラジオ体操
・気分転換を図る活動の推進(休日のハイキングや散歩)
・子どもたちの遊び場づくり

●精神面への援助
・災害後のストレス反応への理解を促す
・やり場のない怒りへの対応
・話し相手になる
・定期的な巡回相談、声かけ
・交流の場づくり

●健康管理
・被災者の健康チェック
・災害関連疾患(肺炎、エコノミークラス症候群など)への対応
・手洗い・うがいの励行、換気、水害時には消毒薬の使用方法などの指導
・予防接種の情報提供や必要な人への声かけ
・賞味期限の切れた食料の廃棄

●災害時支援優先度の高い人への支援
・<小児の場合>遊びの方法(ごっこ遊び、お話、お絵かきなど)の提供
・<視聴覚障害者の場合>手話ボランティア、ガイドヘルパーへつなげる
・<外国人の場合>外国人支援センターへつなげる
・<慢性疾患患者などの場合>服薬の支援および受診に関する情報提供や介助、医療班との連携


2)避難所での運営支援
・専門職・一般ボランティアがそれぞれの役割を明確にし、役割を調整・分担する
・洗濯、炊き出し、入浴などの様々な活動でのボランティアとの調整
・被災者に対するマスコミ勢からの守りに努める
・避難所での情報提供・管理
⇒必要な生活情報(避難所での物品の配置・使い方、ゴミの処理方法、
トイレの使い方、手洗い・うがいの方法、食事等の配給、イベント・行事、行政からのお知らせなど)
感染症予防(風邪、インフルエンザ、食中毒、疥癬、
結核、下痢、水痘・流行性耳下腺炎などの小児感染症等)
・声かけは具体的に「眠れているか」「食事は」「薬は飲めているか」
・「家の状態は(健康に影響するため聞くことがある)」
・一人一人聞く
・軽い運動をすすめる


3)避難所へ来られない人への支援
・情報の提供
・出向いていき、こちらから声をかける
・避難所と同様の対応が必要

■4.現地支援者への支援(現地の支援者も被災者の一人である)
1)現地の支援者の批判はせず、一緒に考える
2)現地の支援者のペースを尊重し、意思決定を支える
・支援者の判断を保証する
・休める体制を確保する
3)カンファレンスなどを活用して体験が話せる機会を作る
4)現地支援者の健康管理(生活状況、睡眠、食事、精神状態、体調の変化等)


■5.活動の考え方
1)活動の原則
・被災前の健康状態の維持が活動の目標となる
・一人ひとりへの声かけを重視する
・活動として何をするのか明確にし、組織的に動く
・医療だけでなく保健・福祉・教育等と協力して支援する
2)初動期以降の活動
・避難所を出て自宅に戻ったときが孤立化しやすいので個別訪問ケアが必要である
・健康ニーズがクローズアップされるような活動が大切
・中期以降は身近な地域支援ネットワークが必要になる
3)活動の展開・つなぎ方
・住民ニーズが把握・集約され、対策に活かされていくように活動する
・災害対策本部から得た情報を確実に全被災者へ届ける、届いていない状況も伝える



■6.被災地での自分の行動
1)被災地で最初に行うこと
・被災地到着後、ボランティアセンターで受付
・ボランティア保険の確認、加入
・名札など名前が分かるものを付ける
・自己紹介を行う
・まず被災地へのお見舞い・労いの言葉を掛ける

2)活動方法・態度
・現地の人(保健所保健師、市町村保健師、地域の責任者、地元の一般ボランティア等)と活動する
・自身の安全確保のため、2人以上で行動する体制をとる
・安心感につながるため、出来る限り同じ人が同じ対象者のところへ行けるような体制をとる
・その地域の窓口となる人(自治会長など)との話し合い、関係性を築く
・救援所や医療班と協力してケア提供する
・地域の地縁組織(自治会、婦人会、青年会)等とチームを組んで活動する
・保健師と連絡を取りながら活動をする
・カンファレンスの開催・参加(参加者:行政、一般ボランティア等)
 →自分の動き方を確認するために情報の共有、活動の方向性を確認する
 →現地の支援者、外から入る支援者にとってもディブリーフィングの場になる
・住民のニーズ集約や継続支援につなげるために、意識して記録を行い、被災地へ残していく
・支援が継続されるための引き継ぎは必ず行う

3)心構え・準備性
・被災者支援サービスについての情報は確かさを確認した上で提供する
・被災者の心理的回復プロセスの特徴を理解して行動する
・アウトリーチ(自分から出向く姿勢)に心がける
・被災者に関わる際には当面のニーズに焦点を当てて話を聞いたり支援を行う
・状況・必要に応じて役割を柔軟に変更していく
・こちらの「したいこと」が被災者にとって必要なことであるとは限らない
・現地の支援者の批判はしない

4)自分自身のケア
・自己の身の安全の確保
・気分の高揚から無理をしすぎることがある。自己コントロールするよう心がける
・自分自身の疲労や相手との関係性を考え、活動期間は1週間程度


【出典】
兵庫県立大学大学院看護学研究科 21世紀COEプログラム
「ユビキタス社会における災害看護拠点の形成」
看護専門家支援ネットワークプロジェクト




院内で地震に遭ったら…

災害時の院内ケア

地震発生後の緊急事態には、看護師のとるべき行動や優先順位が、通常の院内ケアと大きく異なる場合があります。地震直後から3日目ぐらいまでの対応の基本について、国立病院機構災害医療センター看護師災害対策チームに解説してもらいました。
※この記事は、『ナース専科』2008年9月号の特集から抜粋、まとめたものです。

●解説
国立病院機構災害医療センター
看護師災害対策チーム 三浦京子さん 高以良 仁さん 齋藤意子さん
国立病院機構東京医療センター 福元大介さん

■安全確保
災害時の安全確保は、「安全に関する3つのS」(3 Safety)の順に従って行います。
●安全に関する3つのS
1.Self――――自分自身の安全
2.Scene―――現場の安全
3.Survivor――生存者(患者さん)の安全

1.看護師自身が負傷しては、患者さんの安全を守ることができません。緊急地震速報を受けてから地震が来るまでの5秒程度の時間でできるのは、自分の身を守ること。まずはテーブルや机、カウンターの下に潜る、しっかりと固定された動かないものにつかまる、しゃがんで頭部を保護するなどの行動をとります。

2.現場の安全の確保は、建物のほかに病棟内の設備を点検したうえで、その場所で継続した看護の提供が可能かを判断します。窓や天井、壁の破損がないかどうか、ライフライン、医療ガス(酸素)、水漏れがないかどうか、また火災の有無を確認します。出火している場合には、すぐに大声で周囲に知らせたうえで消化器や消火栓を用いて初期消火にあたります。引火性薬品などが近くにある場合には、安全な場所に移します。

3.患者さんの安否確認では、看護師が各病室を回って患者さんの在室と安全を確認します。検査やリハビリなどで不在の患者さんについては、師長やリーダーなどの担当者に報告し、追って安否を確認します。多数の負傷者がいた場合には、その重症度・緊急度によって、その場ですぐに応急手当が必要となりますが、そこでの処置は止血や気道確保など、最小限のことを行います。頭を打ったなどで意識レベルが低下する可能性のある患者さんについては、その受傷経緯がわかるようにメモや記録を残しておきます。

●人工呼吸器など医療機器を装着している患者さんへの対応 
人工呼吸器を装着している患者さんは、酸素の供給が止まると生命に危機が及びます。病院では基本的に自家発電などによる非常電源が作動するので、すぐに人工呼吸器が止まってしまうということはありません。しかし、地震の被害によって医療機器が破損したり、回路が外れてしまうこともあります。そのため、人工呼吸器を装着した患者さんのところにいち早く駆けつけて、機器が正常に作動し、酸素が患者さんに供給されているかどうかを確認します。このとき、人工呼吸器が使用できない場合を考えて、常時アンビューバッグを準備しておきましょう。
シリンジポンプなどで薬剤を持続注入している患者さんも、注入が途絶えると命にかかわる場合があるので、医療者がすぐにその作動を確認する必要があります。

■避難時の対応
地震の場合、建物に大きな被害がなければ建物内にいたほうが安全なことも多いですが、病棟の外に避難が決定した場合には、看護師が避難誘導を行うことになります。避難に際しては、避難経路の確保をしたうえで、患者さんの状態によって移動方法や介助の必要度を考慮して、自力歩行が可能な患者さんから避難を開始します。 避難の際の確認事項としては、
1. 医療ガスなどに異常がないか
2. 避難経路の天井や壁の破損、物品が倒れていないか
3. エレベーターは使えないので、階段で避難するための人手が確保できるか
4. 担架や車イスの数は十分か、足りなければ代用品はあるか
さらに、カテーテルやチューブなどが絡まると、突起物に引っ掛かって抜けてしまったり、転倒・転落の危険性があります。そのため、移動時には、ラインはできるだけ中断します。

■停電時の対応
電気の供給がストップすると、病院全体が暗くなり、さまざまな医療機器、電子カルテやオーダリングシステムといった情報管理に支障をきたします。さらに、滅菌消毒設備、空調設備、エレベーターなども停止するため、治療・看護、情報伝達、移動とさまざまな機能が障害されます。 多くの病院が自家発電や無停電装置を備えているとはいえ、供給電力が限られますので、次のことに注意します。
1.不必要な電源はすべて落とす
2.吸引は足踏み式など、非電力の器材に切り替える
3.手動に切り替えられない機器にのみ、優先的に電気を使用する
4.自家発電装置または無停電装置は、専用コンセントに差し込まないと通電しないため、注意する
5. 自家発電コンセントは、停電時に1分弱、電気の供給が止まるので注意する

また、停電時に備え、日頃から下記の点を実施しておくようにします。
1.人工呼吸器などは自家発電や無停電コンセントにつないでおく
2.非電力機器の操作を訓練しておく
3.充電式のものは充電しておく

■断水時の対応
病院は常時大量の水を使用していますが、災害による水道管や貯水槽の破損あるいは停電などによって断水が生じます。多くの病院では、非常用タンクや受水槽の水がしばらくは使えますが、それらは限られているため、使用にあたっては優先順位を考えます。 さらに水の使用に際しては、次の点に注意します。
1.治療や看護にかかわるものを優先する(傷の洗浄、透析、検査、滅菌業務、手洗い)
2.清拭などのためよりも飲料水としての使用が優先される
3.排泄に水は使わず、便座にビニール袋を敷き、排泄後にビニール袋の口を縛って廃棄する
4.排泄後は手洗い、または速乾性手指消毒薬を使用する(ウエットティッシュは消毒効果が弱い)

■人員不足時の対応
災害時には、限られた人員で初動体制を整備することになり、人員不足に陥ります。人や物が制限された状況下では、その中で何が優先されるべきかを考えながら、処置や看護ケアを提供していくことが大切になります。基本的には次の順で考えます。

1.患者さんの安全確保
2.生命維持のための基本的ニーズの充足
3.清潔や安楽・安心

■ストレスへの対応
被災地においては、負傷者はもちろん入院患者さんや看護師にもストレスが生じます。特に入院中や勤務中に被災した場合、家族の安否や自宅の倒壊等の確認をしたくても電話がつながらない、連絡の手段がないなど不安が募ります。
さらに余震などが続くと安心して眠れないため、ストレスを生じます。看護師はこのような状況下でも、負傷者や入院患者さんの声に耳を傾け、ストレスの軽減につながる看護ケアを行う必要があります。
災害発生後は、病院に負傷者が搬送されてくることが予想され、多くの病院で増床体制がとられます。
ロビーなど1カ所に患者さんを集める事態が発生すると、特にプライバシーのない状態での生活は心身に影響を与え、食欲不振、不眠、循環動態の変調などをきたし、体調が悪化することになりかねません。
また、食事・水分はきちんと摂取できているか、脱水の徴候はないかなど、基本的な観察が平常時以上に求められます。

【出典】
『ナース専科』2008年9月号 「ココが違う!災害時の看護」






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